任意継続と国民健康保険どっちが得?フリーランスエンジニアの年収別シミュレーション【2026年版】
退職後の健康保険は任意継続と国民健康保険どっちが得か、前職年収×独立後所得のマトリクスで2026年度の保険料率をClaude Codeでシミュレーションし、損益分岐点を出した。
エンジニアのゆとです。
会社を辞めてフリーランスになるとき、意外と後回しにされがちなのが健康保険の話だ。退職した会社の健康保険を任意継続するか、国民健康保険に入るか。ネットで調べると「人によって違う」「シミュレーションしてください」で終わる記事が多くて、結局いくら差が出るのか実感が湧かないまま申請期限だけが近づいてくる。
自分も独立したとき同じところで詰まった。それで今回、前職の給与水準と独立後の所得水準を掛け合わせたマトリクスをClaude Codeで作って、どのゾーンでどっちが得になるかを具体的な金額で出してみた。2026年度(令和8年度)の最新の保険料率・上限額をベースにしている。
フリーランスエンジニアが退職後に入れる健康保険は3択
会社員を辞めると、健康保険の選択肢はだいたい3つに絞られる。
- 任意継続: 前の会社の健康保険に、退職後も最長2年間そのまま入り続ける制度
- 国民健康保険(国保): 市区町村が運営する保険に新規加入する
- 家族の扶養に入る: 配偶者や親が加入している健康保険の被扶養者になる
家族の扶養に入れるなら、それが一番安い(保険料0円)。ただしフリーランスは扶養に入るための収入要件(年間収入130万円未満が目安)を超えるケースが多いので、この記事では主に1と2、つまり任意継続と国保の比較を扱う。文芸美術国民健康保険組合のような職業別の国保組合もあるが、エンジニアが対象になるケースは基本的にないので今回は省略する。
結論を先に言うと、独立後の所得が年350万円あたりを超えていれば、前職の給与水準に関わらず任意継続の方が安くなりやすい。逆に独立直後で所得がまだ低い場合は、国保の方が安くなるケースが多い。しかも任意継続に入れるのは退職後20日以内の一度きりで、後から入り直すことはできない。この非対称性まで含めて、次の章で具体的な数字を出す。
任意継続保険料の仕組み — 2026年度は上限32万円
任意継続の保険料は、こういう式で決まる。
任意継続保険料(月額) = 標準報酬月額 × 保険料率
ポイントは2つ。
- 標準報酬月額の上限が決まっている。2026年度(令和8年度)の協会けんぽでは、任意継続被保険者の標準報酬月額の上限は32万円。つまり退職時の給与がいくら高くても、月32万円を超える分は保険料の計算に反映されない
- 保険料は全額自己負担になる。会社員時代は会社が半分負担してくれていたが、任意継続では労使折半がなくなり、自分で全額払う
協会けんぽの保険料率は都道府県ごとに違っていて、東京支部は令和8年度に9.91%から9.85%へ引き下げられた(3月分・4月納付分から適用)。40歳未満なら介護保険料は乗らないので、東京・40歳未満のケースで計算すると次のようになる。
| 前職の標準報酬月額 | 任意継続保険料(月額) | 年額 |
|---|---|---|
| 20万円 | 19,700円 | 236,400円 |
| 26万円 | 25,610円 | 307,320円 |
| 32万円以上(上限) | 31,520円 | 378,240円 |
標準報酬月額32万円というと、額面の月給でだいたい33〜35万円前後、年収換算でおおよそ500万円台半ばから上のラインで上限に到達するイメージだ。つまり前職の年収が500万円台後半以上だった人は、それ以上いくら稼いでいても任意継続の保険料は年378,240円で頭打ちになる。ここが今回のシミュレーションの一番のキモになる。
国民健康保険の仕組み — 東京23区は所得に応じて青天井に近い
国保は「前年の所得」をベースに計算される。独立1年目は会社員時代の所得がそのまま基準になるので、ここで最初のギャップにハマる人が多い。
東京23区は「統一保険料方式」を採用していて、23区内であれば区が違っても保険料はほぼ同じになる。令和8年度(40歳未満・単身・こどもなしの場合)の内訳はこう。
| 区分 | 所得割率 | 均等割額(1人あたり) |
|---|---|---|
| 医療分 | 7.51% | 47,600円 |
| 後期高齢者支援金分 | 2.80% | 17,600円 |
| 合計 | 10.31% | 65,200円 |
2026年度からは新たに「子ども・子育て支援金分」が加わった(上限3万円)。料率は小さいので今回の概算では省略するが、正確な金額を知りたい場合は自分の住む区の国保料計算ページで最終確認してほしい。
計算式はこう。
国保料(年額) = (所得 − 基礎控除43万円) × 10.31% + 65,200円
40歳未満・単身のケースで、所得(課税標準額のベースになる所得、青色申告特別控除後の事業所得や前職の給与所得控除後の金額)ごとに計算すると次の表になる。
| 独立後の所得水準 | 課税標準額(所得−43万円) | 国保料(年額) |
|---|---|---|
| 300万円 | 257万円 | 約331,000円 |
| 500万円 | 457万円 | 約536,000円 |
| 700万円 | 657万円 | 約743,000円 |
| 900万円 | 857万円 | 約948,000円 |
医療分・支援金分の賦課限度額は合計93万円(40歳未満の場合。65万円+26万円に加え、2026年度新設の子ども・子育て支援金分の上限2万円程度を含む)なので、所得900万円あたりでほぼ上限に張り付く。国保には任意継続のような「標準報酬月額の上限」がないぶん、所得が上がるほど保険料も素直に上がっていく仕組みになっている。
Claude Codeで、前職年収×独立後所得のマトリクスを作った
ここまでの2つの表を単純に見比べるだけでも傾向はわかるが、「自分の前職の給与」と「独立後の想定所得」の組み合わせでどっちが得かを一覧にしないと実感が湧かない。Claude Codeにスクリプトを書かせて、マトリクス表を出力させた。
以下の条件で、任意継続と国民健康保険の年間保険料を比較する
マトリクス表を作るPythonスクリプトを書いて。
- 任意継続: 標準報酬月額 × 9.85%(東京・40歳未満・上限32万円)を月額とし、12倍する
- 国保: (課税標準額) × 10.31% + 65,200円(東京23区・40歳未満・単身)
課税標準額 = 独立後の想定所得 − 43万円(基礎控除)
- 前職の標準報酬月額は20万円・26万円・32万円(上限)の3パターン
- 独立後の想定所得は200万円・300万円・500万円・700万円・900万円の5パターン
- どちらが年間いくら安いかを、パターンごとに一覧で出す
- 国保が任意継続より安くなる境目(損益分岐点)の独立後所得も計算する
出てきたスクリプトを軽く調整して回したのが以下。
def ninikeizoku_annual(std_monthly_remuneration):
capped = min(std_monthly_remuneration, 320_000)
return round(capped * 0.0985) * 12
def kokuho_annual(income):
taxable_base = max(income - 430_000, 0)
return round(taxable_base * 0.1031) + 65_200
zenshoku_patterns = [200_000, 260_000, 320_000]
dokuritsu_patterns = [2_000_000, 3_000_000, 5_000_000, 7_000_000, 9_000_000]
for zenshoku in zenshoku_patterns:
print(f"--- 前職の標準報酬月額 {zenshoku:,}円 ---")
nk = ninikeizoku_annual(zenshoku)
for income in dokuritsu_patterns:
kh = kokuho_annual(income)
diff = kh - nk
winner = "任意継続が得" if diff > 0 else "国保が得"
print(f"独立後所得{income:,}円: 任意継続{nk:,}円 / 国保{kh:,}円 → 差額{abs(diff):,}円({winner})")
# 損益分岐点(国保annual == 任意継続annual になる独立後所得)を逆算
for zenshoku in zenshoku_patterns:
nk = ninikeizoku_annual(zenshoku)
breakeven = (nk - 65_200) / 0.1031 + 430_000
print(f"前職の標準報酬月額{zenshoku:,}円の損益分岐点: 独立後所得 約{breakeven:,.0f}円")
結果
| 前職の標準報酬月額 | 独立後所得200万円 | 独立後所得300万円 | 独立後所得500万円 | 独立後所得700万円 | 独立後所得900万円 |
|---|---|---|---|---|---|
| 20万円(任意継続236,400円) | 国保が得(約9千円差) | 任意継続が得(約9万円差) | 任意継続が得(約30万円差) | 任意継続が得(約51万円差) | 任意継続が得(約71万円差) |
| 26万円(任意継続307,320円) | 国保が得(約8万円差) | 任意継続が得(約2万円差) | 任意継続が得(約23万円差) | 任意継続が得(約44万円差) | 任意継続が得(約64万円差) |
| 32万円以上(任意継続378,240円) | 国保が得(約15万円差) | 国保が得(約5万円差) | 任意継続が得(約16万円差) | 任意継続が得(約36万円差) | 任意継続が得(約57万円差) |
損益分岐点(国保と任意継続がちょうど同額になる独立後所得)を逆算すると、こうなる。
| 前職の標準報酬月額 | 損益分岐点(独立後所得) |
|---|---|
| 20万円 | 約209万円 |
| 26万円 | 約278万円 |
| 32万円以上(上限) | 約347万円 |
ここでわかるのは、直感とは少しズレた話だ。前職の給与が低かった人ほど、より低い独立後所得から任意継続が有利になり始める。任意継続の保険料自体が安いので、国保がそれを上回るハードルが低いからだ。逆に前職の給与が上限(32万円)に達していた人は、任意継続の保険料も上限いっぱいになるぶん、国保がそれを上回るには独立後所得が347万円程度まで必要になる。
とはいえ、どのパターンでも独立後所得が350万円を超えていれば、前職の給与水準に関わらず任意継続の方が安い。逆に独立直後で所得が200万円台前半までしかない場合は、国保の方が安くなりやすい。
ここで厄介なのが、任意継続に入れるのは退職後20日以内の一度きりで、あとから「やっぱり任意継続にしたい」と入り直すことはできないという制度上の非対称性だ。逆に任意継続から国保への切り替えは、2年の期限内であればいつでもできる。つまり独立時点で独立後の所得がどうなるか自信が持てないなら、いったん任意継続を選んでおいて、実際の所得が確定してから国保への切り替えを検討する方が、選択肢を残せるぶんリスクは小さい。
配偶者がいるなら差はもっと広がる
このシミュレーションは単身世帯前提だが、配偶者(収入がなく扶養に入れられる人)がいる場合、差はさらに開く。
- 任意継続には被扶養者の制度があるので、配偶者を扶養に入れても保険料は変わらない(年378,240円のまま)
- 国保には扶養という概念がないので、世帯の加入者数だけ均等割が加算される。配偶者1人分の均等割65,200円がそのまま上乗せされる
つまり配偶者がいるケースでは、上の表の「国保が得」になっている行でも、実際は国保側の保険料に65,200円を足して比較し直す必要がある。独立後所得300万円・前職の標準報酬月額20万円のケース(表では国保が約9万円得)でも、配偶者がいれば国保側に6.5万円上乗せされるので、差はほぼ2.5万円まで縮まる。単身か扶養家族ありかで、判断はけっこう変わる。
申請期限は退職翌日から20日以内 — ここで詰む人が多い
制度の損得計算とは別に、実務上の注意点がひとつある。任意継続に入りたい場合、資格喪失日(退職日の翌日)から20日以内に「任意継続被保険者資格取得申出書」を提出しないと、原則として受理されない。
退職の手続きでバタバタしていると、この20日はあっという間に過ぎる。自分の周りでも「気づいたら21日目だった」という話を聞いたことがあるし、この手の期限は健康保険法で決まっているものなので、後から「知らなかった」は通用しない。独立を決めた時点で、退職日が確定したらすぐにカレンダーに期限を入れておくくらいでちょうどいい。
逆に国保への切り替えは、任意継続を選ばなかった場合や、途中で任意継続をやめて国保に切り替える場合も含めて、市区町村の窓口での手続きになる。任意継続から自己都合で脱退できるようになったのは2022年からの制度変更で、以前は一度選んだら原則2年間抜けられなかった。今は「保険料の納付期限までに振込がなければ資格喪失」という形で、実質的にいつでも任意継続をやめて国保に切り替えられる。
独立2年目以降、切り替えるべきタイミング
独立1年目の国保料は前年、つまり会社員時代の所得がそのまま基準になる。前職の給与水準が高かった人ほど、この「前年所得」は上の損益分岐点(209万〜347万円)を超えているケースが多く、1年目から任意継続の方が有利になりやすい。そのうえ、任意継続は退職後20日以内にしか申し込めない一発勝負なので、次のような判断フローが現実的だと思う。
- 独立時点では、まず任意継続を選んでおく。1年目の国保の基準は前年(会社員時代)の所得になるため、多くの場合で任意継続の方が安いか、少なくとも大きく損はしない。何より、あとから任意継続に入り直すことはできない
- 独立2年目、独立後の実際の所得(前年分)が確定したタイミングで、国保に切り替えた場合の保険料を試算し直す。実際の所得が損益分岐点(前職の標準報酬月額に応じて209万〜347万円)を下回っているなら、国保への切り替えで保険料を下げられる
- 任意継続は最長2年で自動的に資格を失うので、いずれにせよ2年後のタイミングで国保への切り替えは避けられない。早めに切り替えるか、上限まで使い切るかの違いだけ
会計ソフトで前年の事業所得をどう管理しているかによって、この試算のしやすさもだいぶ変わってくる。会計ソフトの比較は以前まとめている。

独立後の所得水準そのものをどう見積もるかは、インボイス2割特例の終了時期とセットで考えた方がいい部分もある。

法人化を検討している場合、社会保険は「個人事業主のまま国保・任意継続」か「法人化して社会保険(厚生年金・健康保険)に入るか」という、また別の分岐が出てくる。法人化タイミングを単価換算で整理した記事もあわせてどうぞ。

よくある質問
退職後、任意継続と国民健康保険はどっちが得ですか?
独立後の所得が年350万円あたりを超えていれば、前職の給与水準に関わらず任意継続の方が安くなりやすい。逆に独立直後で所得がまだ200万円台前半までしかない場合は、国保の方が安くなるケースが多い。損益分岐点は前職の標準報酬月額によって209万〜347万円の間で変わる。配偶者を扶養に入れられるかどうかでも差は変わる。
任意継続と国民健康保険、どっちが安くなるタイミングは何月ですか?
「何月」という季節要因ではなく、「独立後の所得が確定するタイミング」で判断が変わる。独立1年目は前年(会社員時代)の所得が国保の基準になるため任意継続より高くなりやすく、独立2年目、実際の独立後所得が損益分岐点を下回っていれば、その時点で国保への切り替えを検討するのが現実的。
任意継続の保険料はいくらですか?
2026年度(令和8年度)の東京支部・40歳未満の場合、標準報酬月額 × 9.85%が月額保険料になる。標準報酬月額には上限32万円があるため、上限に達している場合は月31,520円(年378,240円)が上限額になる。
任意継続の申請期限はいつまでですか?
資格喪失日(退職日の翌日)から20日以内。この期限を過ぎると原則として任意継続には加入できない。退職日が決まった時点で早めに手続きを進める必要がある。
まとめ
- 任意継続の保険料は「前職の標準報酬月額」で決まり、2026年度は上限32万円(年378,240円)で頭打ちになる
- 国保の保険料は「独立後(初年度は前年)の所得」で決まり、上限はあるが任意継続より高いところにある
- 前職の標準報酬月額×独立後の所得水準のマトリクスで見ると、損益分岐点は独立後所得209万〜347万円のあたり。350万円を超えていれば前職の給与水準に関わらず任意継続の方が安くなりやすい(Claude Codeでのシミュレーション)
- 配偶者を扶養に入れられる場合、国保だと均等割が世帯人数分加算されるため、任意継続との差はさらに広がる
- 任意継続に入れるのは退職後20日以内の一度きりで、後から入り直すことはできない。独立時点ではまず任意継続を選び、独立2年目に実際の所得が損益分岐点を下回っていれば国保への切り替えを検討するのが現実的な進め方
保険料率も賦課限度額も毎年見直されるので、この記事の数字はあくまで2026年度時点の目安として使ってほしい。実際に申請するタイミングでは、協会けんぽと自分の住む市区町村の最新の料率を確認してから決めるのが確実だ。