iDeCoと小規模企業共済は併用すべき?フリーランスエンジニアの掛金配分【2026年版】

iDeCoと小規模企業共済は併用すべき?フリーランスエンジニアの掛金配分【2026年版】

iDeCoと小規模企業共済は併用できるが、掛金配分と受け取る順番を間違えると、2026年1月から変わった退職所得控除のルールで数十万円単位の差が出る。フリーランスエンジニアの年収別シミュレーションで整理した。

エンジニアのゆとです。

iDeCoと小規模企業共済は併用できる。これは調べればすぐわかる。問題はそこじゃなくて、「掛金をどう配分するか」と「どっちを先に受け取るか」で、フリーランスエンジニアの手元に残る金額が数十万円単位で変わってくることだ。しかも2026年1月から、受け取り方の一部ルールが静かに変わっている。この記事では、併用の仕組みと、自分の年収でどう配分するのが合理的かをClaude Codeで計算しながら整理した。

税理士・FPの代わりにはならない記事なので、最終判断は専門家に確認してほしい。ただ「そもそも何が論点なのか」を掴むところまでは、これで十分だと思う。


iDeCoと小規模企業共済、そもそも枠は別

結論から言うと、iDeCoと小規模企業共済は制度としてまったく別物で、掛金の上限枠も別に用意されている。混同している人がわりといるので、まず表で整理する。

項目iDeCo小規模企業共済
加入資格自営業者(第1号被保険者)なら原則誰でも従業員20人以下(商業・サービス業は5人以下)の個人事業主・会社役員
掛金の上限月額68,000円(国民年金基金・付加保険料との合算枠)月額70,000円
掛金の下限・単位月額5,000円〜、1,000円単位月額1,000円〜、500円単位
掛金変更年1回のみいつでも増額・減額可能
運用方法自分で金融商品を選んで運用(元本割れリスクあり)中小機構が運用(掛金に応じた固定的な給付水準)
引き出し原則60歳まで不可任意解約可能(ただし条件次第で元本割れ)
貸付制度なし掛金の範囲内で無担保・無保証人の貸付あり
掛金の所得控除全額(小規模企業共済等掛金控除)全額(小規模企業共済等掛金控除)

ポイントは3つ。

  • 掛金の上限枠がそもそも別なので、両方を上限まで積み立てれば合計で月額138,000円、年間で最大165.6万円が所得控除になる(iDeCo 81.6万円 + 小規模企業共済84万円)
  • iDeCoの68,000円という上限は、実は「iDeCo単独の枠」ではなく国民年金基金・付加保険料と分け合う共通枠。国民年金基金にすでに拠出している場合は、その分iDeCoに回せる枠が減る
  • iDeCoは2026年12月分の掛金(2027年1月引落分)から上限が75,000円に引き上げられる予定になっている。ただしこれは国民年金基金・付加保険料との共通枠が広がるという話で、iDeCo単独で自由に使える金額が単純に増えるとは限らない

Claude Codeで、年収別の節税額を計算してみた

制度の説明だけだと「結局いくら得なのか」が実感として湧かないので、Claude Codeに計算スクリプトを書かせて、自分の年収レンジで試算してみた。節税額の計算式はシンプルで、小規模企業共済・iDeCoともに「掛金 × (所得税の限界税率 + 住民税10%)」で近似できる。

以下の条件で、小規模企業共済とiDeCoそれぞれの掛金を変えたときの
年間節税額をシミュレーションするPythonスクリプトを書いて。

- 節税額 = 年間掛金 × (所得税の限界税率 + 住民税10%)
- 所得税の限界税率は課税所得に応じた速算表を使う
  (195万以下5% / 330万以下10% / 695万以下20% / 900万以下23% / 1800万以下33%)
- 課税所得(青色申告特別控除・各種控除後の金額)を
  400万円・700万円・900万円の3パターンで比較する
- 小規模企業共済70,000円・iDeCo68,000円を上限まで使った場合と、
  小規模企業共済のみ上限まで使った場合を比較する

出てきたスクリプトを軽く調整して回したのが以下。

brackets = [
    (1_950_000, 0.05), (3_300_000, 0.10), (6_950_000, 0.20),
    (9_000_000, 0.23), (18_000_000, 0.33),
]

def marginal_rate(taxable_income):
    for limit, rate in brackets:
        if taxable_income <= limit:
            return rate
    return 0.40

def tax_saving(monthly, taxable_income):
    annual = monthly * 12
    rate = marginal_rate(taxable_income) + 0.10  # 所得税 + 住民税10%
    return annual, annual * rate

for income in [4_000_000, 7_000_000, 9_000_000]:
    print(f"--- 課税所得 {income:,}円(限界税率 {marginal_rate(income)*100:.0f}%+住民税10%) ---")
    kyosai_only = tax_saving(70_000, income)
    both = (
        tax_saving(70_000, income)[1] + tax_saving(68_000, income)[1]
    )
    print(f"小規模企業共済のみ(上限): 年間掛金{kyosai_only[0]:,}円 → 節税額 約{kyosai_only[1]:,.0f}円")
    print(f"併用(両方上限): 年間掛金1,656,000円 → 節税額 約{both:,.0f}円")

結果

課税所得小規模企業共済のみ(年84万円)併用・両方上限(年165.6万円)
400万円(税率30%)約25.2万円約49.7万円
700万円(税率33%)約27.7万円約54.6万円
900万円(税率43%)約36.1万円約71.2万円

課税所得700万円クラスのフリーランスエンジニアなら、両方を上限まで使うだけで年間54万円以上、月に4.5万円分の税金が浮く計算になる。ただし現実には「両方を上限まで積み立てられるほどキャッシュに余裕がある」フリーランスは多くない。次の話は、限られた掛金余力をどう配分するかだ。


資金に余裕がないなら、小規模企業共済を先に埋める

両方を上限まで積み立てられないなら、優先順位をつける必要がある。自分の結論は「小規模企業共済を先に上限近くまで埋めて、残りの余力をiDeCoに回す」だ。理由は節税額の差ではなく、流動性の差にある。

  • 小規模企業共済には貸付制度がある。掛金の範囲内で、無担保・無保証人で借りられる。フリーランスは入金サイトのズレや案件の谷間で急にキャッシュが必要になる場面があるので、これは実務上かなり効く
  • 小規模企業共済は掛金をいつでも増減できる。案件が途切れて厳しい月は減額すればいいし、単価が上がった月は増額すればいい。iDeCoの掛金変更は年1回しかできないので、収入が不安定なフリーランスとの相性はよくない
  • iDeCoは原則60歳まで1円も引き出せない。老後資金としては強いが、資金繰りの調整弁にはならない

逆に言うと、案件が安定していて生活防衛資金も確保できている人は、運用益が非課税になるiDeCoの比率を上げる選択肢も十分ありえる。ここは収入の安定度と、すでにある貯蓄額次第で変わる。


【2026年1月改正】受け取る順番を間違えると数十万円損する話

ここが今回いちばん書きたかった部分。2026年(令和8年)1月1日から、退職所得控除の計算ルールが変わった。

小規模企業共済もiDeCoも、一時金で受け取ると「退職所得」として扱われ、勤続年数(掛金を積み立てた年数)に応じた退職所得控除を使える。ここで問題になるのが、両方を一時金で受け取る場合、受け取る時期が近いと、勤続年数の重複部分が控除計算から差し引かれるというルールだ。

  • 改正前: 前の退職金等を受け取った年の翌年から4年以内に、もう一方を受け取ると重複排除の対象になった
  • 2026年1月1日以降: この重複排除の対象期間が9年以内に延長された

つまり、以前は「4年空ければ、それぞれの退職所得控除をほぼフルに使える」という設計が可能だったのが、2026年からは9年空けないと控除が目減りするようになった。iDeCoを60歳で一時金受け取りしたあと、小規模企業共済を65歳で受け取る、といった一般的なタイミングは、5年しか空いていないので普通に重複排除の対象になる。

実務上の影響はシンプルで、「先にどちらを受け取って、いつもう一方を受け取るか」を設計段階から考えておかないと、想定していたより控除枠が少ない状態で退職所得を計算することになる。この改正はDC一時金(iDeCoなど)の受給に対して適用されるもので、2026年1月1日以後に支払いを受ける退職手当等が対象になる。自分がどのタイミングで両方を受け取るのが有利かは、掛金額・加入期間・他の退職金の有無によって変わるので、受け取りが近づいてきたら税理士かiDeCoの運営管理機関に試算してもらうのが確実だ。


解約・元本割れのリスクも別物として見ておく

節税額だけ見て「どっちも満額入れよう」と決める前に、解約時のリスクも押さえておきたい。

  • 小規模企業共済: 加入後12か月未満で任意解約すると掛け捨てになる。さらに加入後240か月(20年)未満で任意解約(自己都合)すると、受け取れる解約手当金が払い込んだ掛金の合計を下回る、いわゆる元本割れになる
  • iDeCo: 原則60歳まで引き出せない代わりに、掛金そのものが減ることはない。ただし運用商品を選んで自分で運用する制度なので、選んだ商品次第では評価額が元本を割り込む可能性がある。さらに加入期間が10年に満たない場合、受給開始年齢が段階的に後ろ倒しになる

フリーランスは会社員と違って収入の波が大きいので、「20年後にまとまった資金として使うつもりがあるか」「途中で解約する可能性がどのくらいあるか」まで含めて、掛金の配分を考えた方がいい。


フリーランスエンジニアはどう配分すべきか

自分の考えをまとめるとこうなる。

  • 生活防衛資金(生活費6か月〜1年分)が確保できていない段階では、小規模企業共済を優先。貸付制度があるぶん、実質的に「税制優遇つきの緊急予備資金」として機能する
  • 小規模企業共済の掛金を上限(月70,000円)近くまで積み立てて、なお余力があるならiDeCoを追加。合計で年間165.6万円まで所得控除にできる
  • 受け取り時期は、iDeCoと小規模企業共済のどちらを先に受け取るかを60歳が近づく前から意識しておく。2026年からの9年ルールを踏まえると、両方を60代前半に一時金で受け取る設計は控除面で不利になりやすい。年金形式での分割受け取りに切り替える、受け取り時期をあえてずらすといった選択肢も含めて検討する

会計ソフト側で掛金控除証明書の入力や年末調整・確定申告への反映をどう管理しているかは、以前ソフトを比較した記事で書いている。

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よくある質問

iDeCoと小規模企業共済は併用できますか?

できる。掛金の上限枠がそれぞれ別に用意されており、iDeCo(月額最大68,000円)と小規模企業共済(月額最大70,000円)を両方上限まで積み立てると、合計で年間165.6万円が所得控除になる。

iDeCoと小規模企業共済、どちらを優先すべきですか?

資金繰りの調整弁がほしいフリーランスなら、貸付制度があり掛金をいつでも増減できる小規模企業共済を優先するのが実務的。老後資金として運用益非課税の恩恵を重視するならiDeCoの比率を上げる選択肢もある。収入の安定度次第で判断が分かれる。

iDeCoと小規模企業共済はいくらまで積み立てられますか?

自営業者(第1号被保険者)の場合、iDeCoは月額68,000円(国民年金基金・付加保険料との合算枠)、小規模企業共済は月額70,000円が上限。合計で月138,000円、年間165.6万円まで積み立てられる。

iDeCoと小規模企業共済を両方受け取るとき、控除は重複しますか?

一時金で受け取る場合、受け取り時期が近いと退職所得控除の勤続年数に重複排除がかかる。2026年1月1日から、この重複排除の対象期間が「前年以前4年以内」から「前年以前9年以内」に延長された。受け取り時期を近づけすぎると、想定より控除額が少なくなる。


まとめ

  • iDeCoと小規模企業共済は掛金の上限枠が別なので併用できる。両方上限まで使うと年間165.6万円が所得控除になる
  • 課税所得700万円クラスなら、併用で年間54万円以上の節税になる計算(Claude Codeでの試算)
  • 資金繰りの調整弁がほしいフリーランスは、貸付制度があり掛金を柔軟に変えられる小規模企業共済を優先した方が実務的
  • 2026年1月から、退職所得控除の重複排除ルールが「4年以内」から「9年以内」に延長された。両方を一時金で近い時期に受け取ると控除が目減りしやすくなっている
  • 受け取り時期の設計は掛金額・加入期間で個別に変わるので、60歳が近づいたら税理士か運営管理機関に試算してもらうのが確実

制度自体はシンプルだけど、「配分」と「受け取る順番」の2つを後回しにすると、数十万円単位の差になって返ってくる。今すぐ全部決める必要はないけど、頭の片隅に置いておく価値はあると思う。

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